行政交渉

2015.08.28

2015年夏 大阪府生活保護交渉

■アンケートについての大阪府の感想

約150世帯分の「私の要求アンケート」をいただいた。

  • 世帯の構成は77%が単身世帯。高齢が多く、8割が60歳以上。70歳台が最も多く、全体の4割を占めている。前年のアンケートと同じ傾向だった。
  • 住宅は98%が借家。単身者が多いことも反映して9割の方が5万円未満の家賃。
  • 保護費のやりくりなど、生活の実態で節約しているものとして一番多かったのが、交際費、冠婚葬祭、つづいて食費、衣類の購入、文化教養費と拮抗している。すべての事項で節約している。文化教養費のうち、旅行・レジャーが多い。
  • お風呂については有るが85%だが、毎日入浴は2割強。半数が週2~3回の入浴。風呂がない方は銭湯に週3~4回と、節約されている状況がうかがえる。
  • 1年間に購入した電化製品については、8割強が購入していない。購入したものではテレビ、電子レンジ、エアコンなど生活に必要なものだった。夏の電気料金については、エアコンの設置状況については約84%が有ると回答。電気料金については半数近くが3,000円未満。5,000円未満25%、10,000円未満25%。高齢者が多いということも考えるとエアコンも節約しながら生活をされているのではないか。
  • 病院への移送費については通院している世帯のうち、無回答をのぞくと12.3%だった。支給されていない理由は徒歩や自転車を利用するため不要の回答が7割弱。受診する医療機関については居住地の近距離に所在する医療機関に通院していただくことになっているが、適切な受診に努めている結果ではないか。回答数が少ないが、就職活動のための移送費についても同様の傾向。
  • 節約については特売日や値段が安くなる時間帯に購入、光熱水費はできるだけ使わない、衣類は長く使って買わない、冠婚葬祭を含め外出の回数を控えるなど節約にご苦労されている様子が伺える。
  • 住宅扶助の見直しに係る転居指導などへの不安に関する項目は、転居や引っ越しをさせられる不安が書かれていた。
  • 扶養については、子供が生活できなくなる、親戚づきあいができない、などの意見が多かった。
  • 就労指導については回答数が少なかった。働ける場がない。就労指導にプレッシャーを感じる。就労支援の回答数も少なかったが、参加して良かったの意見。職員の対応も10人中9人が良いと。丁寧に対応されていると回答されている。
  • ケースワーカーなどの対応―相談しやすいの回答が、しにくいより5倍以上あった。嬉しく感じた。ケースワーカーや民生委員の対応についても、肯定的な回答が多い一方、冷たい、個々の事情を聞く耳を持っていないといった反省すべき意見もあった。
  • 医療費が助かっているという意見が最も多い。ついで生活ができていると生活に関するもの。生活保護を利用する理由そのものといった気がする。
  • 他人の目が気になる。病院や薬局での窓口での支払い、生活費が今以上に引き下げられないかという今後の不安。幸福という回答もあり、受給されて良かったと思う。
  • 旅行がしたい、墓参りがしたい、お金がないといった不安などの意見のほかに仕事がしたい、今の仕事を続けたいと前向きな意見もあり、早くやりがいのある仕事が見つかって自立してがんばってほしいと感じた。
  • 消費税10%への不安、引き下げによって生活が苦しい、楽しみがないとの意見があった。 家計簿にも目を通した。NHKの受信料を支出に上げている方がいた。免除の手続きをされたらと思う。猫の餌代が食費を上回っている不適切なものもあった。

今回のアンケートでは保護費の削減による影響の訴えが多かったという印象があるが、前向きな意見に接することもでき、うれしく思った。府としては今後とも生活保護制度の適正な運営につとめて参りたい。

■前回出された事案への大阪府の回答

各福祉事務所などに確認された。

  • 吹田の件 ― 引越し費用は高額になるので、三社程度の比較をするために見積もりは必要。
  • 門真の件 ― 高齢者の保護費が低いことについての根拠は、生活扶助基準第一類について各年齢階層別の平均消費水準を分析したうえで算定していると国から聞いている。
  • 摂津の移送費の件 ― 管外でも必要があれば支給していると聞いている。
  • 住宅扶助の通知について  ― 大阪府は6月15日に市町村に経過措置について検討してほしいといった通知を発出。このあと、経過措置ア~ウについてより具体的にしたものを市町村が経過措置を考える上での参考にとした文書を8月26日に発出した。
  • 不正受給について ― 平成26年に国から「不正事案についての対応」の通知が出されている。あくまで目安としている。不正金額が高額、収入などでの意図的な虚偽の記載、偽装、改竄、長期にわたるなどの項目がある。平成25年度2,413件(政令市のぞく) 25年度で対保護費比0.56% 対保護世帯比2.8%
  • ゴミ処理について ― 実施要領上はない。改正を国に要望している。
  • 夏季一時金、夏季加算の創設は温暖化、エアコン等の電気代増加に対応するため、国に要望している。
  • 政令市、中核市との住宅扶助について協議した議事録について大阪府は資料提供された。
  • 医療費の一部負担(償還払い)の導入の検討を国に求めている。
  • 八尾の件 ― 酸素吸入者のシャワー設置について 八尾市からは、基本的には家主と相談してほしい、住宅維持費を適用するにしても近くに銭湯があるので利用してほしい、との回答だった。他に制度がないか確認した。内部障害の場合は日常生活支援の給付、住宅改修については給付の途がないと。シャワーについては別冊問答集-問7-115入浴のための最小限の範囲で賄える。近隣に公衆浴場があっても、所要時間、年齢、健康状態等を総合的に判断し、他に適当な入浴方法がないという場合に該当すれば、実施機関として考慮する余地はあるのではと思われる。一度、実施機関とよく相談して。
  • 枚方の件 ― 住宅扶助について課長通知第7-56の特別基準の単身者の適用について 「老人等で従前からの生活状況から見て」の等は誰を指しているのか。

【大阪府】 「老人等で従前からの生活状況から見て転居が困難と認められる」と書かれている。主たるものは高齢者と思われる。住宅扶助の局長通知の経過措置の中で、高齢者、障害者等と書かれており、高齢者、障害者と具体的に示されたものと思う。

  • 摂津の件 ― 「通院のために経過措置を適用してほしい。市は経過措置はいっさい認めていないと言われた。」このことに摂津市に確認したが、いっさい適用しないとは言っていない。

【大生連】移送費など、申請することさえ知らされていないケースもある。各実施機関に教示義務について指導してほしい。
【大阪府】 監査等で教示を促すことについて検討したい。

  • 枚方の事案で、40年来居住しており、地域になじみ転居はしたくない、旧基準で2,000円オーバーしている。

【大阪府】 転居指導の対象になる。特別基準までは認められないが、経過措置の範囲で認めると本人、支援者にも伝えたと枚方市から聞いている。

  • 岸和田の件 ― 身体障害者等に要介護を適用してとの要望だが、個別に判断し、考慮の余地はあると考える。
  • 門真の件 ― 契約書には契約期間は入居可能日からとなっている。契約は6月19日だが、入居日は7月11日なので、旧基準を適用することは困難。
  • 不十分なお知らせ文書について 泉大津のお知らせに経過措置等の説明について書かれていないので不十分だ。泉大津市は経過措置の適用はしていくつもりだったと言っている。経過措置を記した通知は追加して出すことを検討していると回答されている。貝塚市は個別に説明する予定だったと回答。不十分と思われるが、詳細を追加した文書を出すことを検討。
  • 枚方の件 ― 就労支援室に対応を確認。  民間委託の支援室から保護利用者に不適切と思われる内容の留守番電話があった事案。

【大阪府】 枚方市でも把握していて、「あってはならないことと考えている。」当該世帯を訪問し謝罪したと聞いている。また、生健会とは近々応接をすると聞いている。

■回答をふまえてのやり取り

【摂 津】 担当者が訪問のうえ、これからは担当者全体の会議で検討していくと謝罪された。

【吹 田】 市との懇談会で、病人、障害者等は、重度の方を対象としていると言われた。私たちは柔軟な対応を要望。障害の上に重度を適用すれば二重の障害になるのではないか。府の見解を聞かせてほしい。等の適用について文書を出してほしい。

【大阪府】 重度と限定するのは無理があると考える。手帳の有無は、認定の基準になる。障害があるだけでは難しい。

【羽曳野藤井寺】 契約をこの5月に更新し、5年契約となっている。市から、「あなたは来年の4月で契約が切れ、5月からは新基準になる」と言われた。(市は以前の2年更新のコピーで判断)

【大阪府】 5月に更新したものが有効になると考えるが、福祉事務所に更新した契約書を提出する必要がある。

【八 尾】 引き続き、役所に相談する。給湯器を含めた見積もりも出した。

【門 真】 公団の転居費用はどうか。

【大阪府】 該当する項目になかったと聞いている。

【大生連】 経過措置について書かれていない文書も問題だが、「家主に値下げを相談して」というのは問題だ。家主に相談して、関係が悪くなった方もおられる。指導してほしい。

枚方の就労支援の件

【大生連】 ①「逃げ出さないと……」とはどういうことか。②市民団体、宗教に入ったらいけないのか。

【大阪府】 枚方市から不適切な発言があり、本人に謝罪したと聞いている。文書勧告の件、枚方市に確認した。1日6時間14日勤務しており、勧告に該当するものではないと。文書勧告は誤りと思っている。民間委託であっても、個人情報保護について契約先と交わす。

【大生連】 3年前に就労の指導指示をされている。就労しているにもかかわらず、それを根拠に現在も指示されている。指示書の期限はないのか。

【大阪府】 適切に運用されるよう監査等で指示していきたい。

【大生連】 謝罪したというが、枚方市、支援員本人、会社の責任者が足を運び謝罪すべきだ。

新たな人権侵害

【門真守口】 精神障害年金の手続きに診断書代等経費が1万4千円かかる。年金が入ったら控除すると言われた。福祉事務所は手続きを促す人は100%年金を受給できる方なので、
本人払いで、年金から控除することになりますと。年金が不支給の場合は経費は自費と言われた。劣悪な住居で転居を希望している人がいる。整形外科で診断書を取ってくれと言われた。 診断書も自費でとってと言われた。

【大阪府】 別冊問答集問8-27に記載され、控除される。診断書費用は検診命令で出せる。初診の年月日を証明する診断書費用は出す項目がない。現場は困っているので、意見は国に上げていきたい。転居の場合も検診命令を使うことがある。

【大生連】 受給可能な分しか指導していないのはおかしいのではないか。該当者には積極的に助言指導すべきだ。

【摂 津】 家庭訪問でケースワーカーがタンスの引き出しをあけ、奥までみられた。

【大阪府】 生活保護法第4条補足性の原理がある。生活保護は、足らずの分を出す。なので、生活ぶりを見るのが、家庭訪問の目的。毎月の生活を確認するため。ケースワーカーは生活の状況を見て、困っているか、困っていないかを確認する。箪笥の中を見たということだが、理由がわからないので、踏み込んで足らずを確認するためではなかったのか。(いきすぎでないかの声) 家庭訪問をした人は、確認するためではなかったのか。逆に訪問員にお聞きしたい。ほとんどの訪問員はしないと思うが、何かあったんだろう。摂津市に対しては一律にタンスの引き出しをあけて奥まで見るのか真意を聞く。

【大阪府】 最低生活費以下ということがわかれば、それで十分なので、タンスの奥まで見るようなことは通常ない。

【大生連】 調査ありきではなく信頼関係が基本。福祉のこころが求められる。ケースワーカーが自分の成育歴と保護利用者の成育歴を重ねず、他者を認めてほしい。

単身者の葬祭について

【大阪府】 葬祭をされる方の要否判定をして、保護の要件を満たせば支給される。2人で暮らしていて、どちらかがなくなった場合は、残された方に支給される。

【枚 方】 89歳、特別基準を認めてもまだ高い家賃(79000円+共益費)のところに居住。転居先が見つかるまで特別基準の設定をしてほしい。東京都は特別基準で運用している。枚方市に大野城市の判決を示して検討を求めた。府も認めて。

【大阪府】 実施機関の判断になる。府は実施機関の判断を尊重している。

【大阪府】 経過措置の解釈についてQAを作成した。

■参加者のひとこと

  • 105円のかき揚げが140円に、88円の納豆が108円になっている。物価が上がっている。69歳から70歳になった途端、4,000円も減額になった。家賃も8,000円下がるという通知がきて頭が真っ白になった。大家さんに値下げ交渉を言われるが、私たちの責任か。
  • 寝屋川では第三者同席を認めない。第三者が同席した場合と本人だけの聞き取りの場合はまったく対応がちがうと言われる。生活保護を申請する人のこころが傷つかないように対応してほしい。福祉のこころが求められている。
  • 四分の一で200円もする白菜。肉も高くどうやって生活するか頭を痛めている。
  • 住宅扶助については経過措置の柔軟な対応を求める。国の通知を最大限生かして欲しい。堺市では、精神障害2級の方が、転居が困難なケースですが、特別基準を設定した。
  • 医療券ではなくいつでも使える医療証にしてほしい。