行政交渉

2012.12.07

大阪市生活保護交渉

2012年12月7日、大阪市福祉局生活福祉部保護課との交渉を行いました。 武市課長代理をはじめ、4人が対応。大生連からは18単組105人が参加。平野区の助言指導、天王寺区の違法な廃止決定などについて大阪市の保護行政の是正を求めました。

扶養業務

扶養義務/扶養照会の文書に生活保護利用者の住所を記載するな
【 北 】 扶養照会に照会先の住所、氏名を明記することはやめて。その後、しょっちゅう金を借りに来るようになって困っている。個人情報と人権を守れ。
【大阪市】 扶養親族照会の様式は施行細則に則り、使用している。調査については平成17年度実施要領の改正で重点的扶養能力対象者が扶養の対象と、しぼりこんだものに調査をすることなった。しかし、聞き取りをしないとだれが対象なのかわからない。音信不通も含めて聞き取る。そのなかで扶養のお願いをすることになった。

違法な保護開始前の就労指導

「助言指導書」による、保護開始前の就労指導はするな

【平 野】 総合就職サポートに入らない失業者に「助言指導書」を乱発している。

【大阪市】 保護決定実施上の指導指示として「要保護者が、自らの資産能力その他扶養、他法等利用しうる資源の活用を怠り、又は忌避していると認められる場合は、適切な助言指導を行うものとし、要保護者がこれに従わないときは、保護の要件を欠くものとして、申請を却下すること」と実施要領に示している。

【平 野】 申請したその日に(口頭による指導もなしに)出している。どういうことか。(自立サポート支援事業には行かず、自分で職を探すと言っている人に)なぜ、申請したばかりで「活用を怠り、忌避している」と言えるか。それは「指導」の域になっているのではないか?

【大阪市】 大阪市は実施要領にそった「助言指導」を行っている。決定後の「指導」とは違う。「助言指導書」を出すにあたって、稼働能力、仕事の探し方は個別事情がかかわるものと考えるので、一律機械的に出すことは不適切と考える。そういう取扱いがあるとすれば指導する。平野区と話し合う。

【平 野】 パソナに入らない人には自動的に助言指導書を発行する。「活用を怠り、忌避している」と判断できるのか。

【大阪市】 初日に忌避しているか否かを判断することは、個別で異なる。

【淀 川】 相変わらず助言指導書が出され、従わないと保護決定にかかわってくると。そのため、保護決定まで1ヶ月かかっている人がいる。助言指導の通知は全区で出されているのか。

【大阪市】 全区、通知にもとづいてやっている。

保護開始前の手持ち金もない人の就職活動はおかしい

【 北 】 手持ち金は保護費の半額程度が認められているが、それは保護が決定するまでの2週間の施最低生活費。食べるために必死。(就職活動をする金もない人の)「助言指導」はまちがっている。改善せよ。気持ちの余裕のない時に「働け、働け」と言わないで。パソナに入らないと、交通費も支給しない。就労支援に入らない人にも交通費を支給せよ。差をつけるな。

【大阪市】 保護の申請中であってもできるだけ早く、よりよい条件で就職できるように就労を支援することが市の主旨。今は相談に来られた方でも、就労支援を使ってもかまわないということになった。履歴書の書き方などは聞いている。面接のアドバイスなど有効なものもあるので就労支援を勧めている。

【平 野】 所持金なしで申請にたどり着いている。食べるのも精いっぱい。まず保護を決定してのちに就労指導をすべき。平野区では最低「週2回ハローワークに行け」と指導している。求人誌、携帯による求職活動はカウントしないとも言っている。つなぎ資金として1万円貸してくれるが、2週間食べるのもやっと、求職のための交通費など捻出できない。

【大阪市】 不適切であれば指導する。

【大生連】 助言指導は保護の開始要件か。働く意志の解釈について手持ち金のない人に助言指導をすることは合理的な事か。指導するのなら開始後にせよ。

【大阪市】 出来る範囲で努力していることを報告してほしい。

大生連】 「手引き」でも示されているが、手持ち金がないのは窮迫ではないのか。

大阪市保護課、平野区の「助言指導書」の乱発の是正を約束

【大阪市】 指導できるのは保護が開始され被保護者になってから。決定に至っていない方には助言の範疇になる。自分のも近くで求職の努力をしていれば、区の方も承知していることと思う。制度そのものは変わらないと思うが、求人状況が変化している。窓口に来られる方が、仕事を探しても不採用の通知をもらって疲れ果てた状態でこられると現場からの報告で聞いている。自立支援の担当が「働くように」と対応したことについて、話をする。

【大阪市】 平野で回数を示して行かないと却下の可能性があると言うのは不適切。組織的に一律に機械的に行うことは無理が生じる。話をする。

【大生連】 平野の交渉でどの法律にもとづいて「助言指導書」を出しているのかと聞いたら、生活保護法第4条、補足性の原理、稼働能力を活用していただくと言った。大生連は稼働能力の活用については3つの要件があると答えた。4条のどこに助言指導のことが書かれているのか、27条で書かれている就労指導は被保護者だけ、開始前の人は被保護者ではありませんと。区の回答は不正確だと言ったら、課長は「不正確ではありません」と。指導できるのかと聞いたら「助言です」と不正確な回答をした。根拠の法律はいっさい示されなかった。「週1~2回働けと法律のどこに書いているか」と追求したら答えられなかった。この件については厚生労働省に問い合わせをしている。回答後、再交渉を。平野や淀川での「助言指導書」は撤回を求める。

【大阪市】 再交渉の件は了解。平野、淀川で一律、機械的であれば指導する。

自立支援サポート事業/民間委託のパソナの「就労指導」の実態

【平 野】 パソナの紹介するところに行ったが、仕事が合わなくて1日でやめた。始末書を書けと言われた。市はそのように指導しているのか。

【平 野】 就労支援でパソナに入った人は「毎日ハローワークに行け」と言われている。面接まで行かないとカウント(評価)しないと。

【大生連】 民間業者に保護世帯に対して指導指示の権限はあるのか。

【大阪市】 指導指示ができるのはケースワーカーです。法27条にもとづいて行う。

天王寺の違法な廃止決定について

意味不明な保護の廃止理由

【ポッセ】 文書指導も、弁明の機会も与えられず保護を廃止決定。その後、決定は撤回されたが、①天王寺の対応について大阪市はどう考えているか。②保護課は保護法第1条にもとづいて廃止が出来るといわれたが、正しいのか。③適正化チームの尾行行為の根拠は?適正化チームの仕事の内容と行動指針について。
※NPOポッセ京都は学生を中心とする生活保護や労働相談などを支援する団体です。大生連も加盟する「働き方ネット」に参加され、一緒に行動しています。

【大生連】 廃止理由が78条にもとづいている。これは意味不明。居住実態がないとして尾行されたが、(生活保護を廃止された)Aさんは家賃をきちんと払っている。保護の廃止決定が撤回されたとは言え、余りにもズサンだ。


(保護法第78条)
不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせたものがあるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の全部又は一部を、その者から徴収することができる。


大阪市、生活保護法第78条では保護の廃止はできない

【大阪市】 具体の中味まで全部聞いていない。確認する。指導指示違反によって廃止するのであれば、口頭、文書指導がなく廃止はあり得ない。78条にもとづいて廃止は出来ない。生活保護の廃止になるのは、26条の保護の必要がなくなった時と28条の立ち入り調査を拒否した時と62条の文書指導に従わない時。78条で万が一、不正があったとしてもそれだけで廃止出来るものではない。1条はまったく関係ない話。適正化チームの仕事が尾行と言ったのであれば、それはうちの仕事の範疇ではない。不適切なので、天王寺の担当を指導する。保護課がうちでやれると話しているのは、実施機関の調査の権限を超えるものではない。役割がついて業務をしているが、担当のケースワーカーと業務が変わるわけではない。適正化チームが各区に配置されたのが、今年の4月からで、秋には全区配置。仕事の中身は三本柱といっている。①不正受給の調査、②告訴、被害届の手続き、必要な場合に警察と調整して告訴する。③実施機関の実施水準の向上。

【当事者】 私が厚生労働省に疑義を申し出なかったら、廃止されていた。天王寺区や大阪市内で起きていたら、怖い話だ。

適正化チームによる尾行は常態化しているのか?

【ポッセ】 適正化チームの仕事がほぼケースワーカーと同じ仕事と言われたが、それならなぜ配置したのか。天王寺区では適正化チームはケースワーカーではないと言われた。また、尾行は「行動確認」と言われた。また、大阪市の「適正化マニュアル」にもとづいて行っていると言われた。

【大阪市】 適正化チームは担当のケースを持っていない、実施機関は組織としてやるので、警察の捜査など組織として出来ないことまですることはない。全区に配置した背景は不正受給件数が23年度約3300件に。(3300人ではない)と増えている。全体から言えば2%弱とごく一部の人が不正受給をしている。一部ではあるが、報道では大きく取り上げられて、生活保護を受けている人がみんな不正受給をしているようにみられる。私たちも困ったことだと思っている。制度を守るためにも、信頼を回復するためにもやるべきことはやらねばならないと考えている。ケースワーカーを一人増やしたら解決することでもないので、昨年末に浪速、西成で先行し、今年全区に配置した。初めは不正受給への対応だったが、どんどん摘発すると言うより、不正の原因を調べて、ある意味初めのところを調査し、申告を促せば、不正受給にならないケースもあると思いますので、新規の時の調査力を強めて、不正受給を防止したいというのが、本来の主旨です。きちんとした「マニュアル」にもとづいて仕事をするようにとの研修はしていない。4月にいっせいにスタートした際には「ケースワーカーの業務の範囲を超えるものではない」と時間をかけて研修した。

【ポッセ】 天王寺区の適正化委員だけがやったことなのか? 天王寺区は組織的にケース会議を開き、行動確認の決定を下したと言っている。他区でも確認しているか。 (会場から=西成もあるやろ)

大阪市 尾行を指示していない

【大阪市】 ケースワーカーの出来る範疇なので、尾行とか張り込みなどは業務の範疇にはないと説明している。また指示もしていない。警察OBは今は民間のかた、大阪市の非常勤嘱託職員です。ケースワーカーと同じ仕事ではない、補助的業務になる。警察の捜査権を持ってきているわけではない。区保健福祉課の保護課が出来る範囲の調査しかできない。適正化チームには正規職員の係長、ケースワーカー経験のある嘱託職員、警察官OBの3名がひとつのグループ。告訴や被害届の際の調整や調査さきのアドバイスを受けている。
平成23年度不正受給は3300件に。年々増えている。しかし15万世帯中3300で2%弱。一部だが全体が疑いの目で見られる。浪速、西成で先行した。(23.11月)不正の原因を調べることが目的で新規の調査力をつよめ、不正受給を抑えたい。

【大生連】 天王寺区は本庁の指示もなく、勝手にやったのか。処分もありうるか。

【大阪市】 回答する立場にない。

【大生連】 重い病を抱えている方を師走の寒空に放り出すようなことはするな。

過払いの資力の発生日について

【淀 川】 労働裁判で賠償金が入り、保護費の返還を求められた。過払いの資力発生をどの時点で取るのか?
【大阪市】 個別になるが、年金は年金受給権開始日、交通事故の賠償金は交通事故が発生した日、債権整理で払いすぎた分が返ってきたりした場合、返還費用などを払い残ったお金が入った時点です。多重債務支援のプログラムをつくった時に、大阪市が弁護士会と相談し、「本人の手元に入った金額」で行こうと整理した。区にはQ&Aで指導している。

居宅生活移行支援事業

【 北 】 友人宅に居候をしている人が友人宅を居住地として申請に行った。「施設に入れ、それができないなら通所して」と言われた。応じないと保護は認められないのか。
【大阪市】 本人の同意が前提です。居宅生活移行支援事業の通所の気持ちがないことを伝えてもらったらよい。

淀川区で医療抑制

ワーカーが、ジェネリック医薬品を使えと「指示」

【淀 川】 区外の病院に行っている人に区内の病院に変わるように指示している。ジェネリック薬品を強制された。保護利用者には医者を選ぶ権利もないのか。

【大阪市】 区外から区内に転院するような指示は本庁からは行っていない。本人の了解なしにジェネリック薬品を出すことはない。国からも、大阪市も通知は出ていない。

【淀 川】 これまで、大きな病気を患ったが、タクシー代などの移送費が出て助かった。しかし、先日、交通費を請求したら、「市からはタクシー代は使うな」と言われていると。

【大生連】 国も大阪市も指示していないというが、実態として出ている。現地の調査と合わせて、大阪市がやめるよう指導すべきだ。

【大阪市】 毎月受診している医療機関であれば、まとめて市から医療券が送られる。個別に区から送られるものではない。


(返還の免除 第80条)
保護の実施機関は、保護の変更、廃止又は停止に伴い、前渡した保護金品の全部又は一部を返還させるべき場合において、これを消費し、又は喪失した被保護者に、やむを得ない事由があると認めるときは、これを返還させないことができる


保護費の返還

【大 正】 保護費が余分に振り込まれていたために、その保護費を毎月1万円ずつ返還しろといわれ、無理といったら最低でも月5000円を払えと言われた。これを80条で返還免除にならないか。また、保護費を銀行振り込みにしてほしい。私と同じ条件の友人(この人も毎月返還を求められている)は初めから銀行振り込みになっている。なぜか。

【大阪市】 80条には該当しない。詳細は事実確認して次回に回答する。

老齢加算、一時金を復活を求める参加者の声

  • 今でも保護費が足らないのに、これ以上引き下げられたら困ります。消費税増税もやめてください。生きていけない。みんなの苦しみを知ってください。
  • 月末まで何とかやりくりしている。無駄なものは絶対に買わない。できるだけ安いものを懐と相談しながら買うので、とても疲れてしまう。引き下げに断固反対です。少しでも、収入を得ようと新聞配達のアルバイトをしたが、重みに膝の靭帯を痛めて、かえって医療費の負担をかけてしまった。
  • 医療費の一部負担に反対します。我慢して病気が悪化する。かえって医療費が増えるのではないか。現在、がんの転移で治療中、一部負担が導入されれば、治療が出来なくなる。
  • 病気を抱えているので、一部負担は困る。今でも、保護費が足りなくて困っているのに反対です。
  • 老齢加算を復活して!過去にお世話になった人の冠婚葬祭をしたい。特に御参りはちゃんとしたい。お花の一本、お線香のひと束もあげ気持ちを伝えたい。
  • 余裕がないので、知人友人の葬儀に出られない。本当につらい。
  • テレビでの生活保護バッシングに肩身のせまいつらい思いをしている。
  • 基準引き下げを言うが、一度月13万円で生活してみてください。家賃、光熱費、食事代などで精いっぱいです。引き下げは絶対にやめてください。これ以上の引き下げは「死ね」と言うこと。引き下げより、1万円引き上げて。
  • 基準引き下げ、一部負担と国は私たちを殺す気ですか。
  • 交渉に参加したのは2回目、指導の名で本人が嫌がることはやめて。福祉の方と一緒に自立が出来るような援助をしてほしい。天王寺の事例のような尾行なんて許されない。年金や労働者の賃金が低いのであって、保護費が高いわけではない。老齢加算、一時金を復活して。
  • 70歳を超えたら4000円も引き下げられる。老齢加算、一時金を復活して。

【大阪市】 基準引き上げについてはみなさんの思いをお聞きし、反映させていくようにしたい。一時金については復活困難。